講座「読む人の気持ちをつかむ文章術」の質問に答えます

2015年冬期大阪藝術学舎の授業を受講してくれた方の質問に答えるコーナーです

構成するとは?  by.K.Kさん

 一回目の講義で、伝えたいこと、面白いことというテーマを与えられた。面白いことは何もないが身近な経験を頼りに『夫の入院』を書いた。そのエッセーを寒竹先生は面白いと評価してくださった。これで良いのかと思った。

 二回目の講義では、目じゃなく心で書こう。どのように感じたか、何を考えたかを書いてみようと。講義中に書き始めたものを先生は見て回られ、そのときそのまま書いてみようと指示をもらい、それを感染させ、短い文『正月三日』を提出した。この文章は一行半ほど削除した方が、前後の文章のつながりが解りやすいと推敲してくださった。削除する一文は私が言いたいことでもあった。一番言いたいことは言わない方が良い時もあることを知った。構成の難しさを知らされた。

 三回目の講義では、読みたいと思わせる文章を書く。この時も講義中に書き始めの文章を見て回られ私にはそのまま書くようにと前回と同じ指示をもらった。それを完成させ、『歩いています』というエッセーを提出した。三回目の作品は少し長くなった。

 伝わる描写になっているのか、独りよがりの文章になっていないか、読みたいと思える文章であるか、先生の評価待ちである。

 四回目の講義は構成であった。『歩いています』の文章は構成しなおした方が良いのではないかと思われる。長い文章になっただけにカットする必要もあっただろう。この講義で、先ほど提出したエッセーの構成を改めて考えさせられた。

 私は、パソコンの前で、思いつくまま書くので、内容も深みもなく、行き詰まること再々である。昨年五月に必要に迫られパソコンを入手した。目下練習中である。これを使いこなせたら文章も楽しく書けるようになれると思うし構成には大変便利である。

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f:id:pasoco:20150322225843j:plain お答えします…?
 答え…というか、質問というわけではないので、お手紙のお返事ですね。

 文章講座のようなものをしていると時々不思議なことに、小説家の書いた文章かと間違えるほど味わい深いエッセイに出会ったりします。いや、出会うことが不思議なのではないんです。上手い人もいっぱいいます。不思議なのは、書いた本人がそれを面白いと思っていないことなんです。「ものすごく面白いです」とわたしがしきりに断定し、講座の人たちにも読んでもらって、みんなも「いいなあ」って感じてくれる。それでも、本人は、そうかなあ…? と首をひねってたりする。

 不思議だ…。謙虚なのか、エッセイの面白さというものを誤解しているのか(ものすごくすごいことを書かなきゃいけないというふうに)、自分では自分の面白さが見えないものなのか……たぶん、その全部なんだと思います。

 エッセイの面白さにはいろいろありますが、その中のひとつに、文章を読んだだけで、著者がどういう人なのかが生き生きと目に浮かんで、著者になった気持ちで、著者の住んでいる世界をしみじみと感じることができる、という面白さがあると思います。別の人間の視点で世界を見ることができる面白さ。別の人生を感じることができる面白さ。

 K.Kさんのエッセイを読むと、しみじみとよいものが体に満ちてくるのです。K.Kさんの生き方そのものが文章に現れていて、教訓や立派なことを語らずとも伝わってくるものがあります。

 本人は伝えたいことは特にないと思いながら書いてらっしゃると思いますが、もしかしたら、無意識の中では「わたしという人間がこんなふうに生きているよ」ということを伝えたいのかもしれません。わたし自身、文章を書いて人に読んでもらう究極の目的は、わたしという人間がどんなふうに感じてどんなふうに生きているかを伝えて認めてもらいたい、ということかもしれないです。だから、K.Kさんのエッセイを見ながら、こんなエッセイが書けたら理想だなあと思いました。

 K.Kさんは肉体と文章がそのままつながっているんだと思います。普通の人は構えて気取ってしまうけど。目の前に読者(もうひとりの自分かも)がちゃんといる。親しい人に話すようにリラックスして書けている。

 無意識でそれができているからこそ、第三者の目で客観的に文章をデザインする「構成」の作業は難しいかもしれません。でもパソコンという頼もしいアイテムを手に入れたなら、その課題もクリアできるかもしれません。

 おすすめなのは、思いつくまま書いた最初の原稿(初稿)は、そのまま取っておき、「名前を付けて保存」で、もう1つ同じファイルを作り、そのファイルで推敲することです。
 元の原稿が残っているので、推敲用原稿はどれだけいじっても大丈夫。ばっさり消したり、入れ替えたり、好き勝手いろいろ試してみてください。消しすぎたと思ったら、取っておいた元の原稿のファイルも開いて、消してしまった部分をコピーし、推敲用のファイルにペーストして復活させましょう。

 失敗してもすぐにやり直せると思ったら、大胆に構成の練習ができると思います。
 
  でもK.Kさんは構成など考えずに、どんどん書いてほしいです。本当に面白いので。読む人がいない…って残念だなあ。ぜひ、パソコンをもっとマスターして、ブログデビューしてください!